August 23, 2010

* ベルギー王立図書館所蔵 ブリューゲル 版画の世界

http://bruegel.jp/

10日以上前の話になりますが、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムに、この展覧会を見に行きました。

平日ではありましたが、午後〜夕方にかけて行ったこともあり、なかなかの人出でした。作品が全然見えない、ということはないのですが、落ち着いて見るには、ちょっと周囲に人が多いかな、という感じです。じっくり展示を見てまわると、出口に到着するまでに、2時間くらいかかります。

さまざまなテーマで、ブリューゲルや同時代の版画が展示されています。農民の女性の頭巾(というのかな?)の描写に見られる豊かなバリエーションからも、彼が農民の姿を類型的に描くのではなく、十分に観察をして、個性を持たせていたことが分かります。

そして、とてもうれしい偶然がありました。私はその日、ちょうど目の前にあったからと言う理由で阿部謹也先生の『ハーメルンの笛吹き男』をカバンに入れ、家を出ました。美術館に入る前に昼食を食べたのですが、そこで待ち時間にこの本を読んでいました。

そうしたら、今回出展されている作品に、この本に出ていた版画があったのです! 『学校でのロバ』という作品です。ネットで見られる画像で比較的大きいものは、こちらです。これは、展覧会で見たものと左右反転しているので、原版が違うのでしょう。

先ほどの頭巾の例のとおり、ブリューゲルのさまざまな作品で、彼の観察力が存分に発揮されていました。中世好きとしては、(厳密に言うと中世ではありませんが)彼の暮らした時代の風俗が丹念に描かれた版画を見ているのは、とても面白いものでした。

あと、悪魔やグリロス(怪物)の描写も、とても面白いです。ブリューゲルが想像力を駆使して、これらに畏怖の念を抱くというより、思い入れをもって、楽しんで書いていたのではないかと思えるくらいの、ユーモラスな姿です。こういうものは、子供が見ると、楽しめるかもしれません。人出が多いので、子供の忍耐が続くかどうかは分からないのですが……。

そういう細かいところがじっくり見たいと思い、図版を購入したのですが、こういうものこそ、DVDや電子書籍という形式での販売が普及するといいなあ、と思いました。興味のある展示会は、図版が欲しいと思うことが多いのですが、かさばって保管する場所がないので、購入をあきらめることも、また多いのです。保管にコストがかからないとなると、購入する頻度も増えると思います。ぜひ、展示会を企画する方には、検討していただきたいです。

こういう展示会では、メインテーマとは離れたところを考えるのも、また面白いところです。今回は何を考えていたかというと、当時の出版業者です。今のように分業が確立していたわけではないので、出版業者は編集者的な役割も担っていたそうです。出版業者は、どのようなテーマが、どの画家が人気があるかを調べ、発注していました。印刷では、文化や技術を扱うこともあったからか、流行だけでなく最先端のものも把握していました。ブリューゲルの時代からは少々下りますが、江戸時代の日本でも、出版業者の役割は、同じようなものだったのかもしれません。

最後にちょっとケチをつけてしまうと、音声ガイドで微妙に表現が間違っていたところがありました。『バベルの塔』の説明だったかで、「神々」と言っていたのです。でも、ユダヤ教でもキリスト教でも神は1人なので、複数形になることはないですよね。詰めが甘いぞ、頑張れ〜、と思ってしまいました(笑)

でも、そんなのはとても些細なことなので、ぜひ会場に足を運んで、ブリューゲルのリアルで不思議な世界を楽しんでください。

uriel_archangel at 01:59 | 講演会・展覧会 
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