講演会・展覧会

November 09, 2018

* 殿様サミット(2018年11月4日開催) 後編

後半の「殿様サミット」は、次の方々が参加しました。
出演:
コーディネーター:樺山紘一氏(東京大学名誉教授、印刷博物館館長)
御三家より:川斉正氏(水戸川家)
大名家より:阿部正紘氏(備後福山藩阿部家)、細川護光氏(肥後熊本藩細川家)、前田利祐氏(加賀藩加賀前田家) (五十音順)
実はメモ魔の本領を発揮して、自分のノートには結構細かく記録しています。でも、どこまで書いたらいいのかな……? ということで、書き方については試行錯誤してみます。

まずはそれぞれのご当主の文京区にからめた自己紹介がありました。戦前・戦中にお生まれの方々によると、疎開から帰ってみたら屋敷がGHQに接収されていて、戦後しばらくは別荘があった鎌倉で過ごされたとのことでした。鎌倉のあの雰囲気は、華族の別荘があって作られたものなのだな〜、と思いました(文京区に関係ないですけど)。

家訓はありますか、という質問に対しては、皆さん口をそろえて「そういうものは伝わっていない」とおっしゃっていました。とは言え、自主的に過去のことを学んでいるという方もいましたし、先祖の残した文書を読んでいると考えが伝わってくる、という方もいました。

阿部家のご当主は、誠之館(藩校)の名前の由来となった孔子の『中庸』にある「誠者天之道也、誠之者人之道也。(誠は天の道なり、誠之は人の道なり)」が、自分にとっては家訓のようなものとおっしゃっていました。余談ですが、この誠之館を作ったのは、あの阿部正弘なんですねー。江戸屋敷にも藩校があったので、文京区立誠之小学校(西片にある)に名前が残っています。

コーディネーターを務められた樺山先生(西洋中世史の本でお名前を見ていたので、私にとって『先生』なのです)は、「商家では厳しい家訓が残っていることがある。大大名家は逆にないんだなあ、と思いました」というようなことをおっしゃっていました。

ご先祖のお墓について、という質問に対しては、これまた皆さん口をそろえて「お墓の維持管理が大変」とおっしゃっていました。転封であちこちに菩提寺があると、なかなか大変のようです。また、先祖が作ったお寺があったりすると、負担がますます増えるようです。

水戸徳川家は常陸太田市にある領地が見渡せる場所に光圀公が墓を建て、先祖代々そこに入っているそうです。400年も経つと15万坪の土地に190基のお墓があり、お参りするのも大変とのこと。お母様が70歳のときにその仕事を引き継いだそうですが、お母様は全部お参りするのに3日がかりだったそうです。今はご位牌を水戸に運んで、あまり時間がかからないようにしているとのことでした。

前田氏は、ご先祖が偉ければ偉いほど、歴史が古ければ古いほど、ご先祖のお墓やお寺の維持管理が大変になるが、自分の家はそれほど歴史が長くないからそういう苦労は他の方に比べると少ないだろう、という趣旨のことをおっしゃっていました。私たちからしたら十分古くて歴史があると思うのですけれどね。

大名家同士の交流はありますか、という質問については、みなさん「冠婚葬祭で結構会います」とのことでした。大名家同士や華族同士で結婚することは普通にあったので、なんだかんだでだいたい親戚、という感じだそうです。そこで挙げられるお名前は、「ああ、知ってる。分かる」というお家の連続でした。

最後は、家の歴史を担うことについて、それぞれの役割をどう考えていますか、という質問でした。やはりみなさん、先祖から受け継がれたものを守り、次の世代に伝えていくことについては、しっかりと受け止めていらっしゃいました。モノだけでなく家(血統?)も守るというのは、一般人には想像もつかない世界だなあと思いました。

家として受け継いでいくと贈与税や相続税が大変なので、財団法人を作ったり、しかるべき組織に寄付・寄贈したりして、受け継いできたものを守るというのも大事なことだなあ、と思いました。

ということで、本当にほんのちょっとだけ、ご当主の方々がお話された内容をご紹介しました。本当は、みなさんお話がお上手で、クスクス笑ったりしながら聞いていたのですが、短い文章にまとめるとそういう面白さが消えてしまうのが残念です。

そして、帰りがけに物販コーナーでも見るか、と思っていたのですが、ここでお財布を忘れていたことに気づきました……。荷物を小さくするよう努めているので、今日は荷物が軽いぞ、と喜んでいたのですが、お財布がなかったから、なのでした(地下鉄やコンビニでの買い物はモバイルSuicaですませていたので気づくのが遅くなりました)。

ご当地の物販どころか、駅ビル(メトロ・エム後楽園)やラクーアでの買い物もできない……と、トボトボと帰宅しました。

――と書くと誤解を招きそうですが、殿様サミットはとても興味深く、楽しめました。

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November 08, 2018

* 殿様サミット(2018年11月4日開催) 前編

週末はこのイベントに参加しました。1回の申し込みで2名まで応募できるとのことでしたが、2人だと落選の可能性が高まるかも……ということで、家族を含めず私1人分だけ申し込みました。その結果、無事に当然しました! それでよかったのかはさておき、です。

そうしたら、かなりの申し込みがあったようで、開催直前にこんな記事を見つけました。倍率高かったのね〜、と思っています。会場でアンケートが配られたので、「次回は大ホールで開催してほしい」と書きました。たぶん同意見多数、という状態だったでしょうね。

そして本題のイベントです。前半は、今回おいでいただくご当主のお家(水戸徳川家、備後福山藩阿部家、肥後熊本藩細川家、加賀藩加賀前田家)と文京区にどのような所縁があるかの説明と、ゆかりの自治体によるPRです。

基本的に、文京区には上屋敷や中屋敷があったそうです。それぞれ、水戸徳川家の上屋敷は後楽園、中屋敷は東大農学部あたり、備前福山藩阿部家は西片の住宅地(もともと阿部家が開発したそうです)、肥後隈本藩細川家は和敬塾本館・永青文庫・肥後細川庭園、加賀前田家は東京大学本郷キャンパスと、現代にも面影(というには大きなもの)が残っています。

ゆかりの自治体PRでは、茨城県水戸市・広島県福山市・熊本県・石川県金沢市の担当者が、それぞれのPRを行いました。それぞれ印象に残ったのは……
茨城県水戸市:
水戸の梅まつりを紹介する映像を流していましたが、一番集客力があるイベントは、徳川ミュージアム所蔵の燭台切光忠関連のものとのこと。さすがです!

広島県福山市:
福山市出身の世良公則さんが、市制100周年記念の映像でナレーションを務めていました。とてもかっこいいお声でしたー(もっと声の仕事をしてもいいのでは? と思うくらいです)。

熊本県:
くまモンが来ましたー。一緒にいるおねえさんもイベント慣れしているので、会場の空気を一瞬でわしづかみにしていました。こういうキャラクターがいるのといないのとでは、PRの効果が全然違うんだなー、と思いました。

石川県金沢市:
この順番だったので、「くまモンに負けないように頑張ります」みたいなことをおっしゃってました。街並みも食べ物もお茶も、伝統工芸も魅力的です。特に食べ物は、日本海のおいしいものがたくさん味わえそうです。「金沢冬のAKB」ということで、冬はA(甘えび)K(カニ)B(ぶり)が楽しめるそうです。

くまモンも、公式Twitterで今回の活動を報告していましたよ。

ここで休憩が入り、「殿様サミット」となります。この続きはまた明日。

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November 05, 2018

* 京都・醍醐寺展 真言密教の宇宙

以前から、ポスターなどで使われている如意輪観音のお姿が気になっていました。「来週末で終わるということは、確実に時間が取れる今がチャンス!」ということで、行ってまいりました。

平日ということもあって、ひどい混雑ではありませんでした。訪問者の平均年齢は高い感じです(私は若いほう)。会場に入ってすぐに、如意輪観音がいらっしゃいました。実は絵葉書を購入したのですが、絵葉書では白地にぽんと観音さまが浮いているような感じで、いかにも「絵葉書」という印象になってしまっています。ポスターや展示と同じ、黒い背景がいいなあ、などとぜいたくなことを思ってしまいました。

醍醐寺の歴史から始まるので、平安時代の像や絵などが展示されています。真言密教のお寺なので、不動明王の像や絵がいくつか見られます。どれもすごい迫力だなあ、と感心しました。当たり前のように重要文化財や国宝とされているものが多く展示されています。

五大明王像は圧巻! という感じでした。大威徳明王が乗っている水牛が、なんとなくかわいいお顔でしたけれど。国宝の薬師如来はとても大きくて、威厳が感じられました。

また、醍醐寺が宗教的にも政治的にも重要な寺院であったことを示す展示もありました。開祖が天皇家にゆかりのある人物であり、修験道だけでなく空海に近い人物から真言密教を教えられたということで、これは自然な流れだったようです。足利尊氏が懇意であった座主賢俊の四十九日に奉納したという理趣経もありました。達筆というわけではありませんが、丁寧に書かれた文字が印象に残りました。

そして、戦乱で荒廃した醍醐寺の再興に尽力した義演を支援したのが、豊臣秀吉でした。最後は、当時描かれた「いかにも安土桃山」という障壁画と、醍醐の花見で出席者が詠んだ和歌を清書した短冊などでした。江戸時代に描かれた《松桜幔幕図屏風》は、秀吉の生前に行われた醍醐の花見の華やかさを思わせるものでした。こちらの記事の最後のほうで紹介されています。

――ということで、醍醐寺の歴史は真言密教とも政治とも深くかかわってきたのだなあ、と感じさせるものでした。展示品リストには、九州国立博物館でのみ展示、というのが多くあったので、来年開催される九州での展示は、さらにパワーアップしていると思います。如意輪観音像が気になった方は、行ってみるといいのでは、と思います。

今回はせっかく東京ミッドタウンに行ったので、虎屋茶寮であんみつと抹茶グラッセのセットをいただきました。

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さらにせっかくなので、季節の栗あんみつにしました。

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上にのっているのは栗のアイスかな、と思ったのですが、なんと栗のペーストでした。優雅な時間を過ごして帰宅しました。

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November 04, 2018

* 平成30年秋季特別展「酒飯論絵巻−ようこそ中世日本の宴の席へ−」

これもTwitterで知った展覧会です。面白そうな内容なので行ってみました。茶道についてはまったく詳しくないので、なぜこういう展示を茶道の資料館で行うのか、までは考えていませんでした。

そんな状態ですが、展示は興味深く見ました。
酒飯論絵巻(しゅはんろんえまき)は、酒が好きな「造酒正糟屋朝臣長持(みきのかみかすやのあそんながもち)」、飯と茶を好む「飯室律師好飯(いいむろりっしこうはん)」、酒も飯もほどほどを良しとする「中左衛門大夫中原仲成(ちゅうざえもんのたいふなかはらのなかなり)」という3人が言葉をつくして「酒」と「飯」について「論」じ合う物語に、3人がそれぞれご馳走をふるまう絵がつけられたものです。
ということで、それぞれが好きなタイプの宴会が描かれています。酒好きの宴会は酔っぱらって大変なことになった人々が続出しています。ご飯とお茶が好きな人の宴会では山盛りのごはんが供されて、もりもりと食べています。どちらもほどほど、という場合は、あまり極端に走らずに楽しんでいます。

この絵巻を見ていて興味深かったことが2つあります。1つはもちろん、器はどういう形だったか、調理はどのように行われたかなど、当時の生活(宴会なので、日常ではないでしょうけれど)が生き生きと描かれているところにあります。先ほども少し書きましたが、酔っぱらうと今も昔もそんなに差はないんだな、という感想を抱きます。

そして、この「酒飯論絵巻」はいくつかの写本が存在するそうですが、その中の4種類を取り上げ、ポイントとなる部分を比較しています。これが、私にはとても興味深いものでした。原本に近い、または原本そのものとされる文化庁所蔵の版は、着物の柄や器に盛られた料理が詳細に書き込まれているのですが、それ以外の版では着物の柄が少し違っていたり、器に盛られた料理の描写が大雑把になっていたりするのです。

例えばですが、茶臼の細かいパーツが、時代が下るにつれて形が変化するために、原本通りに描かれなくなっています。文化庁の版では調理をする人物の足が見えている絵も、底本とした版で足が描かれていなかったからか、比較的再現性が高いものでも足が描かれていないものがあります。後世に色が塗りなおされ、もとは茶色だったお酒が別の色で描かれたり、器の色味が変わっていたりします。

このような小さな差から、どちらが古いか、どれが原本かを考察する作業は、まさにパズルという感じです。もちろん絵柄だけでなく、絵具などの科学的な鑑定も入るでしょうけれど。しっかりとした図録も販売されていて、そういう細部の比較なども面白そうだったのですが、正直なところ荷物はもう増やせないな、という状況だったのであきらめました(自宅もそうですし……)。

それと、私自身が茶道に詳しくないのもありますが、茶道の懐石料理で現在使われている銚子(徳利ではありません)の歴史的な変遷なども紹介されていました。そういう方面が分かる人だともっと面白いのかな、と思います。

実はこの展覧会にはお茶券もついていまして、お茶(抹茶)とお茶菓子をいただけました。

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茶道とは縁のない私も、ゆっくり楽しみました。周辺には茶道具のお店もあり、「表千家も裏千家もあるし、このあたりはそういう人が集うエリアなんだなー」という印象を持ちました。

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November 03, 2018

* 本能寺刀剣展 2018秋

この記事を書いている時点で、刀剣展についての情報はこちらのページに掲載されています。

この展覧会は、Twitterで「勉強になる」とTLに流れてきました。宿からも行きやすい場所にあったこrもあり、せっかくなので朝いちばんに行ってみました。もちろん参拝もして

本能寺の大賓殿宝物館での展示でした。最初に入るフロアが刀剣展で、本能寺と縁のある刀剣が展示されていました。森蘭丸の大太刀と伝わる刀もありました。「こんな刀があったのか」と印象に残ったのは、織田信長が命じて磨り上げ、南蛮風の拵えにしたという太刀でした。

由緒ある太刀を無銘にすることに信長の意図があったようです。そこで磨り上げた人物が、目立たないところ(鍔の裏だったか)に、今は無銘であるが、だれそれが磨り上げ、これこれこういう太刀である、とこっそり刻んでいます。依頼主(信長)の意図を無視する行為ですから、命がけだったようです。

「京のかたな展」で仕入れた情報によると、磨り上げて本来の銘を失った場合は、磨り上げた人物が先ほど上の段落で書いたような由緒を銘にします。後世の鑑定というか、判断されたものは朱銘にするそうです。先ほどの刀はそれができなかったもの、ということです。

このように歴史的な刀もあれば、現代の刀工が手がけた刀も展示されていました。

そして、次のフロアは「日本刀が学べる展」ということで、刀ができるまでを詳しく説明しています。玉鋼を鍛える方法など、模型か実物かは分からないのですが、見て分かる資料とともに段階を追って展示しています。また、さまざまな時代を代表する刀剣の等身大の模型も展示されていて(自由に触っていいそうです)、時代とともに変化する様子を知ることができます。

さらに、三日月宗近や五虎退などの押形とともに、刀剣鑑賞で必要となる用語の解説もありました。とても分かりやすかったです(と言いつつ写真を撮らなかったので紹介できないのですけれど)。

こういう感じなので、スケジュールに余裕があるなら、本能寺刀剣展を見てから京のかたな展に行くと、より理解が深まるのではないかと思います(個人の感想です)。

ところで、ちょうど私が行った日から、森蘭丸の大太刀の押形が押印される期間限定の御朱印が始まっていました。

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運がよかったです。

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November 02, 2018

* 特別展 京のかたな−匠のわざと雅のこころ ―

偶然翻訳祭の日程がこの特別展の会期に重なったので、「これは見に行くしかない!」と、前売り券を購入し、「わくわく」と楽しみにしていました。夜行バスを使うので、平日朝早くに京都に着くのも有利です。

宿泊予定のホテルに荷物を預け、朝食もいただいて、博物館に向かいます。時計を見ながら移動していたわけではないのですが、8時45分くらいには博物館に到着していたと思います。予想外の人出でした。私の感覚でこれに近い人出だったのは、まさに東京国立博物館での「鳥獣戯画展」です。鳥獣戯画展の方が人数は多かったとは思いますが、それにひけを取らない並び方でした。

鳥獣戯画展はどうしても巻物に人が集中してしまいましたが、「京のかたな展」では会場にまんべんなく人がいる感じなので、中に入ってからの混雑は、そんなにひどいとは感じませんでした。もしかしたら、開館前から並ぶ熱心な刀剣ファンは多いけれど、そこに追加して鳥獣戯画展のように続々と詰めかけるほどの動員はないのでしょう。とすると、トータルでは「印象派の展覧会」くらいかもしれません。

時間が足りないので、三日月宗近や圧切長谷部など、最前列で見るのをあきらめたものは数多くあります。とにかく数が多いので、単眼鏡も駆使してじっくり見ていたら、余裕で1日を会場で過ごせると思います(空腹でひっくりかえりそうですが)。

ひとつひとつの刀をじっくり鑑賞して論じられるほどの知識はないのですが、今回の展示で三日月宗近をはじめとする初期の太刀の形は優美だと思いました。実際に持ったら違う感想かもしれませんが、軽やかな感じさえします。武器らしくないなあ、と思いました。

私はヨーロッパ旅行で中世(近世もあるかも)の剣を目にする機会がありましたが、やはり日本の武器に比べると武骨というか、「斬る」より「(本体の重量も活用して)殴打する」を重視したものです。軽やかとか優美という言葉とは無縁の姿かたちで、日本の刀とは全然違います。

ヨーロッパの剣も戦闘で使用するという役割が薄れてからは美術工芸品だったとは思うのですが、造形そのものよりも、装飾(宝石で飾るとか)を重視したのかな、と思います。

そうやって優美に軽やかに作られていた太刀も、鎌倉〜室町時代となるとより威力を発揮できるような重厚な雰囲気になります。大太刀ともなると「本当に戦場でこれを振り回していたんだろうか……」という感想を抱くような大きさ(長さ)です。刃が届く範囲には近寄りたくありません。

打刀や短刀も多く展示されていました。とは言っても長さや身幅にバリエーションがあって、刀工だけでなく依頼主の好みや用途によってもさまざまなものが作られたのだろうと思います。「自分だったらどんな刀がいいかな」なんて考えるのも、面白いのではないかと思います。

時代が下るにつれ、新たに鍛えられた刀だけでなく、その時代の用途に合わせて過去の太刀を磨り上げたものも多くみられるようになります。展示の解説にもありましたが、当時の刀工が過去の作品を磨り上げることで研究し、自分の作品に活かしていたようです。

――ということで気になったのは、長義の刀を堀川国広が磨り上げて作ったという打刀です。国広はそれだけでなく、この刀の写しも作ったと解説にありました。うん、確かにこの切先の感じは、足利で見たことがあるような……。

ということで、まったく詳しくなくてもこれだけ考えが広がったのですから、詳しい人にはどれだけ魅力的な展示だったのだろう、と思います。Twitterで見ていると、京都や近県に在住の方が通いつめたくなる気持ちが分かります。詳しい人なら、見るたびに新たな発見があるでしょう。

私は図録を買い、コラボショップでグッズを買ったところで時間切れになりました。次の目的地にまっすぐ向かう予定が疲労と空腹に耐えきれずにお昼を食べたため、次の予定に遅刻してしまいました……。

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October 31, 2018

* 第28回JTF翻訳祭に参加しました

先週、10月25〜27日は、京都に滞在していました(夜行バスを利用したので、出発は24日夜です)。主な目的は翻訳祭への参加だったのですが、「せっかく京都に行くし!」と便乗してあれこれ予定を詰め込んだため、「何をしに行ったんだろう?」というくらいの充実ぶりでした。

今回の翻訳祭の内容は産業翻訳に関するものの割合が高く、自分の仕事に直結するものが多くあったというわけではありません。ですが、いろいろな分野のお話が聞けて、(仕事につながるかどうかはともかく)新たな知識を得ることができました。

本当は一番自分に関わりが深いはずの、最初の飯間氏の講演に遅刻してしまい、ほとんど聞けなかったのは痛い失敗でした……。が、そこはあまり悩まずに次に進みます。次のセッションは私にはあまり関係ないかな、ということで参加せず、企業ブースで説明を聞いたりして過ごしました。

こうやって書いてみると、1日目は交流パーティーだけという状態ですね。とは書いたものの、交流パーティーでも、積極的にネットワーキングしたというわけでもなく……エネルギー補給してました(汗)

前日の反省を活かし、2日目は興味のあるセッションに積極的に参加しました。以下は参加したセッション名とその感想です。
  • iPS細胞を用いたパーキンソン病治療(高橋 淳)
    専門外ではありますが、せっかくの京都開催ですし、最先端のお話が聞けると思い参加しました。講演の内容は十分に理解できました。このようにして、今後どころか現在進行形で、いろいろな病気に対してiPS細胞を利用しての治療が試みられているのでしょうね。時間はかかりますがどんどん新たな治療法が開発されるので、長生きしなくちゃなあ、と思いました。

  • Road to XV 〜FINAL FANTASY XVで12言語を同時発売できるまで〜(長谷川 勇)
    日本語から多言語への翻訳というのは、ゲームを遊んでいるだけの人間には分からないような苦労があるんだなあ、と思いました。英語から訳すにしても名詞に性がある言語への対応が必要になりますが、日本語の場合はそういう違いがもっと多くなるのですよね。翻訳が進まないと分からないことや、デバッグで明らかになることもあるでしょうから、本当に「ご苦労さまです」という気分です。

  • How Machine Translations can help you most(Mike Dillinger)
    私は基本的に翻訳の仕事で機械翻訳を使うことはないのですが、機械翻訳をめぐる最新で有益な情報が入手できたと思います。「これを使えばどんな文書もスイスイ訳せる」なんていう都合のいいツールはないのです。……が、質疑応答などで出てくる話を聞いて、スピーカーが考える機械翻訳と世間一般で考えられている機械翻訳には乖離があるんじゃないかな、と感じました。

ランチョンミーティングでは、memoQの話を聞きました。実は企業ブースを回った時も説明を聞いたのですが、便利そうだと思いました。すぐに手に入れなければというものではないので、もう少し様子を見ます。

実は2日目は疲労で途中で睡魔に襲われ、「このままだとセッションの最中に爆睡して迷惑がかかるかもしれないから、帰ろうかな……」という気分にもなったのですが、セッションの合間に移動で歩いたりしていたら、なんとか頭がしゃきっとしてきて、最後まで参加できました。

でもぼんやりとはしていたようで、帰りのバスを乗り間違えて今出川通りを進んでしまいました。以前に観光で来た時にバスで通ったことがあるルートなので、途中で降りて地下鉄に乗ればOKでした。当然ですが、多少間違えても、どうすれば挽回できるかが分かっていれば、そんなに慌てずにすみますね。

次回の翻訳祭は、2019年10月24日(木)にパシフィコ横浜で開催されるそうです。どういう規模で、どのような内容で開催されるのかを楽しみにしています。

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October 04, 2018

* 企画展「標本づくりの技(ワザ)−職人たちが支える科博−」

こちらも気になっていたので、昆虫展の後で入ってみました。場所は日本館1階、地下1階だとラウンジがある場所の上にあたる企画展示室です。

昆虫展で見た昆虫も、常設展で見ているあれやこれやも、すべてこういう標本資料がベースになっています。それを作成するのが、決して表には出てこない職人(とも呼べる人)たちなのです。そういう地味で大切な作業と、それを行う人たちにスポットライトを当てた展示でした。

植物の腊葉(さくよう)標本(押し葉標本)は、種類によってはお湯で煮ると、立体的なもとの姿に戻せるそうです(煮戻し)。ホットプレートや電子レンジで加熱すると書いてありますから、そういう方法もあるのでしょう。その後もまた押しつぶして乾燥させると、再び保存ができる状態になるそうです。そういうものだったとは、知りませんでしたー。

詳しい説明が書かれたパンフレットがあるのですが(無料)、その表紙に
収集された自然物や科学技術の産物などの「モノ」を研究、修造あるいは展示などの目的に合わせて「標本化する」ことによって、初めて「モノ」は「標本」としての命を獲得する。
「標本」とは、博物館などが、自然界に存在する様々なものを多種多様な目的に沿って全体の中から取りだし、観察・調査する対象の一部を構成するもの。
とあります。

当然ながら、保存状態も大切です。20世紀初頭に「伝インカ帝国のミイラ」として寄贈された子どものミイラ標本(子どものときに見た覚えがあります〜)も、単なるペルーの「子どものミイラ」だったのが、時代が下るにつれて調べられることが増え、今ではインカ帝国末期〜植民地期に人為的に作られたミイラ、ということがわかったそうです。今後はDNA分析などもできることから、さらに詳しいことが分かるのではないか、ということです。これは、保存状態が悪かったらできないことです。

そのほか、化石のレプリカを作る過程や、動物標本の種類や最先端の3Dプリンターを利用した剥製の作製技術、人骨修復なども見ることができ、決して規模は大きくありませんが、非常に興味深い展示でした。博物館を支え、未来の人々に貴重な標本を残すためにも、この作業の重要性を多くの人々が知ることは大切だと思います。

この展示は、博物館の裏側を描いた漫画『へんなものみっけ!』とコラボしています。展示室でも試し読みの小冊子を配布していました。作者の早良朋さんは、国立科学博物館で実際に標本を作っていた経歴を持つそうです。

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October 03, 2018

* 特別展「昆虫」

ぽっかりとスケジュールが空いたので、今日がチャンス! とばかりに行って参りました。実は、今週が最後のチャンスなのです。

10月の平日ということで、予想通りそれほど人出は多くありません。見学はしやすかったのですが、思った以上に小さいお子さんを連れた親御さんがいました。我が家の息子は虫が苦手なタイプなのですが、虫が好き、という人には、何度行っても楽しめる場所かもしれません。

私は昆虫がとても好きというタイプではないので、最初の模型のところで「ほー」となっていました。なんというか、模型のイメージするのが「大きなものを何分の1スケールで模型にする」なので、「実物の○倍サイズの模型」はすごいなあ、と思いました。「ハチって、こんなに毛が生えてるんだ!」という発見がありました。それと、クワガタの平たい感じも際立ちますね。

そして、昆虫の多様性ということで、いろいろなところに住むいろいろな種類の昆虫が展示されています。林の中で見られる昆虫は、光があまり届かない場所ということで、あまりカラフルではない、それどころか人間の目には地味に見える、というのは大きな発見でした。

それと、南国の昆虫と聞くと大きいものを連想しがちですが、小さいものもいるのですね。北(寒いところ)に行くほど大きさのバリエーションが少なくなりますが(ベルクマンの法則)、南(暖かいところ)は大きいものから小さいものまで生きていける環境なんだなあ、と実感します。

そういう多様性を超えて、「なんでそんな格好になったの?」という昆虫たちも展示されていました。美しい羽を持つモルフォチョウもいましたが、不思議な姿をしたツノゼミの標本も興味深かったです。ツノゼミ自体は小さいので、拡大した図を見て「へーえ」と感心していました。ロクロクビオトシブミも「なんでそんなに長い首になったの?」という不思議な姿をしています。

そして、閲覧注意の「Gの部屋」に入ります。中学高校の文化祭の生物部の発表のように、そこらへんで捕まえたと思われるGが入っていたら話は別ですが、ここで見られるのは都会では見られない(日本にいないのもいるかな?)、あまりGっぽくないGでした。Gとしては、そういうもののほうが主流だそうです。そのGの1種類を見ていて、「あれ、もしかしてJamiroquaiの"Virtual Insanity"に出てくるGってこれかな?」と思いました。たとえが古くてすみません。

昆虫の興味深い生態も紹介されていました。アリを利用する昆虫にはいろいろ種類がいて、どう利用するかもその種類それぞれで、興味深いなあと思いました。かわいらしい漫画で紹介されていました。ニホンミツバチの蜂球の映像も見られましたよ。

そして、夏休みのお子さん向けという感じで、「昆虫研究室」(どう捕獲し、どう標本するか)にも結構なスペースを割いていました。ノムラホイホイというわなが、中に入れるものを変える(だけでなく設置場所も変える)といろいろと捕まえられてよいそうです。検索してみたら、科博のサイトに作り方使い方がありました。

そして、科学博物館が所蔵する、または著名な研究者が所蔵する標本が、たくさんありました。標本を作製し、保存する手間を考えると、在野の研究者の存在はとても大きいなあ、と思います。最先端の保存技術やデータ取得で得られた3D昆虫も見られます。

この展示のために発見したセイボウの一種に名前をつけよう、という企画もあり、ものすごーく、昆虫好きな子たちに「きみも今日から研究者!」というメッセージを送っているなあ、と感じられる展示でした。つまりは「昆虫好きの昆虫好きによる昆虫好きのための展示」ですね。何回見ても新たな発見があって、恐らくリピーター状態だったお子さんもいることでしょう。

こういう展示を見てますます昆活にいそしんだ子のなかから、未来の研究者が生まれるんだろうなあ、と思いました。

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September 15, 2018

* [世界を変えた書物]展

会期が短かったので、今後の予定を考えると、これは今週しか行ける時間が取れないな、ということで行ってまいりました。実は初めての上野の森美術館でした。私にとっては異色の展示会でした。
本展では、金沢工業大学 が所蔵するコレクション“工学の曙文庫”から選りすぐられた稀覯書の数々を、わかりやすく展示公開します。
ということで、関連した実験器具などの展示はなく、ひたすら本を見る展示でした。

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最初の部屋は、こんなふうにたくさんの本が並べられていて、幻想的な空間になっていました。人が途切れることがなかなかなくて、慌てて撮影したのでちょっと曲がってますね……。

当然と言えば当然なのですが、展示されている本は本当に有名な学者のものが多く、理系は専門外の私でも名前を知っている人物ばかりでした。というか、「この人はこういう研究もやっていたのか」という発見もありました。

そして書物を紹介する展示では、下に鏡が置かれているので装丁も見ることができました。古いものほど凝った装丁で、現代に近づくほどあっさりとした作りになるのが興味深かったです。活版印刷は大きな変化ですが、本の流通の方法も、また時代によって変化しているのですね。

昔は、いろいろな分野に精通した人が多かったのだなあ、と思いました。例えば、ゲーテと言えば作家として知られていますが、外交官でもあるだけでなく、今回の展示でもあったように、色彩(光)に関する著作もありました。それと、ヤング率で有名なヤングも実は医師で、やはり光に関する著作がありました。

また、当然ながら出版と同時代の人物の著作だけでなく、活版印刷の初期には古代〜中世の重要な著作が出版されました。そのような人物としてウィトルウィウス、エウクレイデス(ユークリッド)、アルキメデス、イシドールスが挙げられます。活版印刷の出現以前は写本という方法しかなかったわけですから、活版印刷がどれだけ知識の普及に貢献したかを実感します。

そして当然ながら、そうやって普及の機会が増えると、どのような言語で書かれているかが重要になります。

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解説部分も撮影したのですが、見にくいかもしれません。
ステヴィンは16世紀の偉大な科学者のひとりだったが、著作をオランダ語で書いたので、その影響は地方にとどまった。
国境を越えて人々に自分の著作を知ってもらうには、当時はラテン語で書かなければなりませんでした。でも彼にそういう思いはなく、自分の周囲にいる人々に教えたいと思ったので、世俗の言葉のみで記したのかな、と思います(真相は分かりませんが)。

現代でも、英語で論文を書かないと書いたと認識されない、というような話があるのを思い出しました。

最後のショップでは、家族のおみやげにトートバッグを入手して帰宅しました。

現代ではそういう意義はあまり強調されませんが、出版は新しい知識や思想を広めるということで、かなり「とんがった」職業であり、時代によっては(日本でも)印刷・出版の業者は権力者から取り締まられたりしたそうです(今回の展示では、そういう側面には触れられていません)。そういう歴史を思いながら見ると、また別の感慨を覚える展示でした。

uriel_archangel at 11:58 | 講演会・展覧会 
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