ブリューゲル

March 14, 2018

* ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜

ほぼ1か月ぶりの展覧会、そしてやはり1か月ぶりのブログ更新となりました。最初に言いたいのは、「この展覧会を見に来ないなんて、もったいない!」です。思ったより人が少なかったのです……。

確かに、「これぞブリューゲル」というような大作や有名な作品が来ているわけではありません。でもこの展覧会を見れば、ブリューゲル一族の作品の特徴や当時流行した作風が分かります。他の展覧会とも関連した「ああ、これはあのときに見た絵と同じだ」というのもあり、点と点でしかなかった知識がつながるのは、とても面白いものです。

たとえば、ノアの箱舟を描いた作品では、さまざまな種類の動物や鳥が描かれています。これは、先月見に行った「神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展」で見た、ルドルフ2世が収集した珍しい動物を、画家が観察して描いたと思われる絵(オルフェウスの絵だったと思います)を思い出します。

当時の貴族(領主?)階級の人々の間で、「驚異の部屋」が流行したというのは、今回の展覧会での音声ガイドでも言っていました。「種を蒔く人のたとえのある風景」も、やはりルドルフ2世の展覧会で見たような?

今回の展覧会でも、単眼鏡が活躍しました。小さな作品、しかも細かく書き込まれた作品が多いので、できる限り近づいて見ても、自分の目だけだと「分かるような分からないような……」になってしまうのです。単眼鏡があれば、顔を近づけて気合を入れなくても、細かい部分がはっきり見えます。単眼鏡のおかげで、花の静物画には、たいてい虫が一緒に描かれている、ということも分かりました。花の中に隠れるようにいるものは、普通に見ていたら見落としているところでした。

一族の中には主にイタリアで活動した人物もいるのですが、やはりイタリアらしく、静物画も大きくつややかな果物が描かれていて、やはりこういう特徴が出るのだなあ、と思いました。

共作もいくつか紹介されていたのですが、フランドルの画家だけでなく、イタリアの画家とも共作をしていたとかで、作品の移動距離にもびっくりです。よく無事に現代まで残ったなあ、などと思ってしまいます。長距離の移動に耐えられるということで、銅版に描かれた作品もありました。大理石を使った作品は、だまし絵というか、さぞかし見る人は驚いただろうなあ、と思いました。

ピーテル・ブリューゲル2世については、父親の作品を模写したものが多かったからか、作品が市民向けてあまり残っていないからか、詳しい情報がありませんでした。薄利多売でやっていて苦労も多かったようで、それが報われるような情報ってないのかな、という気分になります。

こうやって、いろいろと見て「ふーん」「なるほどなるほど」とは思いましたが、ブリューゲルを扱った書籍は多いから、図録は……いいかな……ということで、そんな感じです。絵葉書も、版画から花の絵からいろいろあって、絞りきれませんでした。

――が、結局、花のブリューゲルの絵が気になったので、マグネットを買いました。あと、これです↓
FullSizeRender
フェイラーのハンカチです。使いやすくて好きなのですよねー。デザインも合っていると思います。ショップで実物を見て、赤い縁取りのものを選びました。

uriel_archangel at 16:14 | 講演会・展覧会 
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June 13, 2017

* ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 BABEL 16世紀ネーデルラントの至宝 ―ボスを超えて―

ようやく行けました。朝イチで行ったので、そんなに並ばずに入場できました。……と言っても、私の基準は「鳥獣戯画」展なのですけれど。

今回の展示は、ブリューゲルだけでなく、影響の大きかったヒエロニムス・ボスの作品やその模写(木版画など)、当時のネーデルラントの彫刻、絵画なども紹介しています。こうやって振り返ってみると、目玉はブリューゲルの『バベルの塔』でしたが、ボイマンス美術館所蔵の作品をじっくり鑑賞するよい機会になったと思います。

「北方の絵画は油彩で、サイズも大きくないし描写も細かいから、単眼鏡を持っていこう〜」ということで、先日購入した単眼鏡を持っていったのですが、思った以上に活躍してくれました。それほど小さな作品ではなくても、人が多くて近寄って見られないときは、少し離れた場所(人垣の後ろ、というくらいの場所です)から細かい部分を単眼鏡で鑑賞できました。

あと、単眼鏡は視野が限られるので、その場所を集中してみる、という効果があるなあと思いました。ヒエロニムス・ボスの《放浪者》の絵で、解説になかったのでおそらく意識していなかった、建物の陰で用を足している人物がいることに、単眼鏡で細部を見ていて気づきました。

ボスの《聖クリストフォロス》は、宗教画の周囲に彼の得意とする不思議なモチーフがちりばめられていて、興味深かったです。以前にも書いた覚えがありますが、ボスやブリューゲル(そのほかボスに影響を受けた作品)で描かれる実在しない生き物には、画家の想像力が存分に発揮されていて、とても楽しめるのです。

実は、マスコットキャラの「タラ夫」がいる《大きな魚は小さな魚を食う》を見るのも楽しみにしていました。むかーしむかし、ドイツ語学校に行ったときに、ブレヒトの『三文オペラ』のメッキーメッサーの歌(Haifischの歌)やそれに関する文章が教材に使われたのですが、そのときにこの絵も授業で見たのです。

そして最後に、《バベルの塔》です。20年以上前に、ウィーンの美術史美術館で、これとは違う《バベルの塔》を見たことがあります。今回来日している作品以前に描かれ、サイズは大きいですが、ボイマンス美術館の《バベルの塔》は、それを踏まえてさらに構想をふくらませたもの、という感じがしました。

前の列は、立ち止まらずに歩きながら鑑賞するので、改めて少しはなれた場所からじっくりと見ました。このときも、単眼鏡を使って、巨大な塔のあちこちで作業する人の細かい様子を見ることができました。どんな展示会でも持っていくと使える場面がありそうです。ミュシャの《スラヴ叙事詩》も、これがあれば細かい部分が見られたかなあ、と思います(持っていかなかったのです……)。

図録も魅力的でしたが、絵葉書だけ購入しました。

最後に、美術館から足をのばして、も見学しました。私はしなかったのですが、タブレットで顔を撮影して登録すると、塔の中で働く人が自分の顔になるそうです。プロジェクションマッピングも、とても興味深いものでした。

uriel_archangel at 11:57 | 講演会・展覧会 
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August 23, 2010

* ベルギー王立図書館所蔵 ブリューゲル 版画の世界

http://bruegel.jp/

10日以上前の話になりますが、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムに、この展覧会を見に行きました。

平日ではありましたが、午後〜夕方にかけて行ったこともあり、なかなかの人出でした。作品が全然見えない、ということはないのですが、落ち着いて見るには、ちょっと周囲に人が多いかな、という感じです。じっくり展示を見てまわると、出口に到着するまでに、2時間くらいかかります。

さまざまなテーマで、ブリューゲルや同時代の版画が展示されています。農民の女性の頭巾(というのかな?)の描写に見られる豊かなバリエーションからも、彼が農民の姿を類型的に描くのではなく、十分に観察をして、個性を持たせていたことが分かります。

そして、とてもうれしい偶然がありました。私はその日、ちょうど目の前にあったからと言う理由で阿部謹也先生の『ハーメルンの笛吹き男』をカバンに入れ、家を出ました。美術館に入る前に昼食を食べたのですが、そこで待ち時間にこの本を読んでいました。

そうしたら、今回出展されている作品に、この本に出ていた版画があったのです! 『学校でのロバ』という作品です。ネットで見られる画像で比較的大きいものは、こちらです。これは、展覧会で見たものと左右反転しているので、原版が違うのでしょう。

先ほどの頭巾の例のとおり、ブリューゲルのさまざまな作品で、彼の観察力が存分に発揮されていました。中世好きとしては、(厳密に言うと中世ではありませんが)彼の暮らした時代の風俗が丹念に描かれた版画を見ているのは、とても面白いものでした。

あと、悪魔やグリロス(怪物)の描写も、とても面白いです。ブリューゲルが想像力を駆使して、これらに畏怖の念を抱くというより、思い入れをもって、楽しんで書いていたのではないかと思えるくらいの、ユーモラスな姿です。こういうものは、子供が見ると、楽しめるかもしれません。人出が多いので、子供の忍耐が続くかどうかは分からないのですが……。

そういう細かいところがじっくり見たいと思い、図版を購入したのですが、こういうものこそ、DVDや電子書籍という形式での販売が普及するといいなあ、と思いました。興味のある展示会は、図版が欲しいと思うことが多いのですが、かさばって保管する場所がないので、購入をあきらめることも、また多いのです。保管にコストがかからないとなると、購入する頻度も増えると思います。ぜひ、展示会を企画する方には、検討していただきたいです。

こういう展示会では、メインテーマとは離れたところを考えるのも、また面白いところです。今回は何を考えていたかというと、当時の出版業者です。今のように分業が確立していたわけではないので、出版業者は編集者的な役割も担っていたそうです。出版業者は、どのようなテーマが、どの画家が人気があるかを調べ、発注していました。印刷では、文化や技術を扱うこともあったからか、流行だけでなく最先端のものも把握していました。ブリューゲルの時代からは少々下りますが、江戸時代の日本でも、出版業者の役割は、同じようなものだったのかもしれません。

最後にちょっとケチをつけてしまうと、音声ガイドで微妙に表現が間違っていたところがありました。『バベルの塔』の説明だったかで、「神々」と言っていたのです。でも、ユダヤ教でもキリスト教でも神は1人なので、複数形になることはないですよね。詰めが甘いぞ、頑張れ〜、と思ってしまいました(笑)

でも、そんなのはとても些細なことなので、ぜひ会場に足を運んで、ブリューゲルのリアルで不思議な世界を楽しんでください。

uriel_archangel at 01:59 | 講演会・展覧会 
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