展覧会

January 15, 2019

* ムンク展―共鳴する魂の叫び

会期が終わってしまう! ということで、連休最終日に慌てて行きました。

――これまで、東京都美術館で経験したことのないくらいの行列でした。9時半くらいに現地に着いたのですが、動物園にも負けないほどの、いやそれ以上の行列ができていました。アナウンスはなかったのですが、前日のTwitterでの公式のツイートを見て、入場まで60分待ちだな、と思いました。結果、まさにその通りでした。

久しぶりに、人を見に行ったような展覧会でした。「叫び」は有名な作品なので、小さい子と一緒の家族づれも多く、長く並んで待たねばならないので、親も子も大変そうだな、と思いました。

だいたい作成年代順に展示されていると、実は「叫び」は結構早い段階で来るのです。前で立ち止まらずに見る列はとても長かったので、立ち止まらずに見る人たちの列の後ろから、時間制限なしで見るほうを選びました。とは言っても、全体が見られるなかなかいい位置に行けたので、結果としては良かったです。スタッフが声をかけていたので、前の列で立ち止まる人はいませんでした。こういうときに、背が低くないのは有利です。

「叫び」だけでなく、「マドンナ」などの有名な作品が見られたのも良かったです。今回の展覧会の副題に"A Retrospective"とあります。「回顧展」という意味のとおり、「叫び」だけではなくムンクの生涯をたどる展覧会となっていました。

ショップの行列もなかなかでした。ポケモンとのコラボグッズもあり、やはり有名な作品が来ているだけに、こうなるのですね。実は体調が絶好調というわけでもなかったので並ぶ気力もなく、ショップでは何も購入しませんでした。

もっと会期の早いうちに、平日に行っておけばよかったなあ、と思いました。

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December 01, 2018

* 生誕110年 東山魁夷展

先週末になってようやく、会期終了が近いことに気づき、今週の平日に慌てて行きました。

現代の人気画家ということで、客層が普段行く展覧会と違うなあ、と思いました。普段は高齢者に分類される方々が多いのですが、東山魁夷展は私と高齢者の中間の年代の人も多いように感じました。

初期の作品は「セザンヌかな?」という雰囲気ですが、だんだん私がイメージする「東山魁夷らしさ」が感じられる作品になりました。

私はドイツとオーストリアの風景を描いた作品を最初に知ったので、その実物が見られたのはうれしかったです。実は文庫本サイズの画集だったので、「あの絵、こんなに大きかったのか〜」と思いました。ローテンブルクの絵は、自分の記憶にあるローテンブルクと同じだなあ、と思っています。

ちょうど家族と北欧がどうこうという話をしていた直後だったのもあり、北欧(スカンジナビア諸国)の風景を描いた作品があったのは、「うわー、すごい偶然」という感じがしました。北欧らしい風景の絵も印象的でした。また、京都を描いた絵は、近代化や観光地化が進んだ今では見られない風景というのが感じられて良かったです。

唐招提寺の障壁画は、画家としての集大成という感じで、素晴らしいものでした。青い海、緑深い森、中国の揚州や桂林の風景など、作業に費やした年月や彼の思いを思うと、圧倒されました。

これに関連して、ごく短い期間だけ彼の作品に現れた白い馬の絵も、とても印象的でした。特に「緑響く」はよく目にする人気の作品なので、白い馬の出てくる作品は多いと思っていたのですが、そうではない、というのが意外でした。

晩年の、障壁画を描いた以降の作品も、何気ない風景が内省的な感じで、とても印象に残りました。絶筆となった「夕星」は、心に訴えるものがありました。

この展覧会は、細谷佳正さんの音声ガイドだったのですが、これが本当に素晴らしかったです。ゆっくりとしたスピードと落ち着いた声で、画家や作品に寄り添い、「あなただけのために耳元でお話しします」という感じの解説を聞くと、理解が深まります(そういうふうに感じられます)。画家の内面を語りかけてくる感じが、ものすごくありました。

最後の物販では絵葉書をあれこれ選んでいたのですが、2000円という絶妙な価格設定に、普段は買わない図録も購入してしまいました。2000円だと財布のひもがゆるみます。図録は場所を取るのが悩みですが、「この1冊なら入るかな」と思うのです(そして実際、ちょっと片づけたら入りました)。ちなみに会計ではなかなかの行列で待たされました。ここからも、人気の画家というのが分かりますね。

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これが、ローテンブルクの町の風景です。今もこういう場所が残っていると思います(最近行ってないのですが)。

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これはフライブルクの風景です。この展覧会とは関係ないところで聞いたのですが、フライブルクの教会の塔は、空襲を受けたのですが爆風が運よく塔の中を吹き抜けたため崩れなかったので、その姿は市民の心のよりどころとなったそうです。私には、雲間からの光が教会を讃えているように見えます。

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これが、おそらくもっとも有名な白い馬の作品です。最初に描いた作品が行方不明になったので、それを惜しんで再制作したものだそうです。

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これは、自宅の庭でたたずむキジバトだそうです。羽をふくらませて枝にとまる後ろ姿が、哲学的に感じられます。

ありがたいのは、彼の多くの作品は日本で見られる、ということです。長野県信濃美術館 東山魁夷館が2019年秋にリニューアルオープンするです。そこで見られるものも多いので、楽しみにしています。

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November 23, 2018

* 天文学と印刷 新たな世界像を求めて

もともと興味のある内容なのと、チラシがとてもいい雰囲気なのとで、行ってみることにしました。実は9月に行った[世界を変えた書物]展(私の感想はこちら)と、内容というか書物がかぶるところもあります。

これまでに仕入れた知識からまとめると、活版印刷が始まったころは、印刷業者(この展覧会では印刷者という言葉を使っていました)自身も知識人(どんな内容を印刷しているか理解できる人)で、権力者にとって都合の悪い内容のものを印刷することを警戒されて、規制を受けたことも多々ありました。

出版業者が規制を受けるというのは、日本でも同じことがあったので、国や文化が異なっても共通するところがあるのだなあ、と思っています。それまでと比べたら大量に印刷できるし、情報が拡散するスピードを考えると、それも当然というか、権力を持つ側からしたら規制したくなる存在なのだろうと思います。

そんなわけで、やはりこの展覧会で紹介される本の印刷や出版を手がけた人物のなかには、自身も天文学者であったという人がいました。そういう天文学的な重要性を評価できる流れがあって、コペルニクスの著作が出版にいたったそうです。

アルブレヒト・デューラーも印刷に深くかかわっていました。彼自身学術的な知識も持っていたので、たとえば天球図を手がけたりもしています。

先ほども書きましたが、活版印刷で大量生産が可能になったため(しかも挿絵付き)、天体の観測方法など、重要な情報が、それまでと比べたらとてつもないスピードで拡散するようになったそうです。これで夜空を観測する人も増え、情報が蓄積され、それを分析してまた新たな発見がなされ……ということがあったのではないかと思います。

植物学は、挿絵のついた本が広まったことで、それまで文字による記述が頼りだった同定が、非常に容易になったそうです。インターネットで様々な情報に容易にアクセスできるようになった現代では、そこまで大きな変化だったとは想像が及びませんでした。

コペルニクスの『天球の回転について』や、ケプラーの『宇宙の調和』など、[世界を変えた書物]展でも紹介されていた書物が、この展覧会でも紹介されていました。

今回、興味深く感じたのは、最後に日本の暦法との関連が紹介されていたことです。日本では、吉宗の時代に規制が緩和され、正確な暦を作るために、ヨーロッパの天文学の書物が輸入されるようになったそうです。それまでは、中国(明や清)で翻訳されたものを入手していたとのことでした。中国で翻訳された書物や、日本人が記した暦の本などもありました。

大きな展示ではありませんが、じっくり楽しみました。

ところで、いつも印刷博物館に行くときは、文京区役所からB-ぐる(コミュニティバス)を使用しています。B-ぐるは帰りに使えるルートがないので不便だなあと思っていました。そこで今回は、初めて印刷博物館から神楽坂に歩いて行ってみました。意外と近いし、街並みを眺めながら歩いていると退屈しません(後楽園駅から印刷博物館の道は、歩きやすいですがそういう面白いものはありません)。

さらに神楽坂には、ランチを楽しめる場所がたくさんあります。今回はカジュアルなビストロでフレンチを楽しみました。神楽坂は飯田橋駅も近いので、後楽園駅に比べると、交通の便(地下鉄や鉄道)もはるかに便利です。今度からは、印刷博物館の後は神楽坂に来ればいいんだな、と思いました。

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November 22, 2018

* フェルメール展

フェルメールの作品が、1つの展覧会でこれだけ見られることはなかなかない! ということで、行ってきました。

この展覧会は、日付と時間帯を指定したチケットで入場するシステムなのですが、入場が可能になる時間の直後は、なかなかの行列になりました(15〜20分くらい待ちました)。並んでいる間に学生の身分証明書を確認するし、入場は(おそらく)バーコードのチケットがないのでそれなりに早いし、流れ作業で音声ガイドももらえます(音声ガイドはチケットに含まれています)。外で待つ時間は発生しましたが、入ってしまえばスムーズでした。

――が! 広い会場ではないので、とにかくあちこちで混雑が発生してしまいます。フェルメールの絵画だけでなく、当時のオランダ絵画も展示しているのですが、そういうどうってことのないはずの絵(来館者が目当てにしているような絵ではないもの)でも、ぎゅうぎゅうの混雑になってしまっていました。ただ単に、狭いところが展示場所になっていて、来館者が歩くスペースが足りないから、なのです。

フェルメールの作品はさすがにそういう場所ではなく、広いスペースに全作品が展示されていました。そんなにひどい混雑ではないのですが、絵のすぐ前に立って見ようとしたら大変です。絵から1.5〜2mは離れたところから鑑賞する感じです。そんなわけで、持っていった単眼鏡が大活躍しました。

離れた場所からでも、細かい部分の描写が見られます。テーブルにかけられた布の模様(刺繍?)や、台に置かれたパンのパサパサした感じなど、しっかり確認できました。かなりの人出なので、単眼鏡や双眼鏡など、離れた場所からでも鑑賞できるよう準備をしておいたほうがいいです。

たとえば、ルーベンスの作品は、そこまで細かくチェックしなくても楽しめますが(チェックしても楽しめるとは思います)、フェルメールの作品は、そういう細かいところをじっくり見るのが興味深いのです。

グッズ売り場では、コラボのミッフィーは売り切れていて現時点では注文もできない状態なので、展示されていた中で一番好きな作品のマグネットを買いました(あれこれ貼っているので、実家の冷蔵庫がプチ展覧会会場になってきています)。

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この絵を所有するアムステルダムの国立美術館、また行きたいな〜。ハーグのマウリッツハイスもいいのですけれど。

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November 21, 2018

* ルーベンス展−バロックの誕生

これは、バロック絵画やベルギーに興味があったら外せないでしょ、ということで行きました。

今回の展覧会は、イタリアの影響を受けた画家としてルーベンスを見るというものでした。アントウェルペン(アントワープ)を拠点に活躍したので、ベルギーの画家として、ということはつまり北方ルネサンスの延長線上にいる画家として考えがちです。ですが、彼の作品を考えると、イタリアの影響を受けていると考えるほうが、確かに自然かもしれない、と思いました。

画家としてだけでなく外交官としても活躍した人物なので(今もアントワープには立派な邸宅があります)、さぞかし恵まれた家柄の出身なのだろうと思っていたのですが、血筋と財力でどうこうしたような人生ではなかったのが意外でした。

とは言ってもそれなりの家庭でしたが、困窮した親が小姓として出仕させ、そこで芸術の才能を見出されて、絵の修行をして親方となり、それからイタリアで学び、そこで培った語学力を買われて外交官になったのだそうです。

イタリアの影響を受けているということで、彼に影響を与えたと思われる古代ローマやギリシャ時代の彫刻(や後代のレプリカ)、ティツィアーノなどのイタリアの画家の作品が、一緒に展示されていました。例えば、たくましい男性の体は「ラオコーン」の影響、スザンナの姿は古代の彫刻のポーズを基にしているなど、「なるほどー」という発見がありました。

私のイメージでは、祭壇画や宮殿を飾る絵のように大きな作品が多く、あまり日本で見たことがないなあ、という印象なので、いろいろな作品が見られて良かったです。

会場に入るところで、大画面でアントワープの大聖堂と、そこにある彼の祭壇画、つまり『キリスト昇架』と『キリスト降架』を紹介していました。というわけで、出展しているわけではないのですが、グッズにもありました。

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ついつい買ってしまう私。

平日午前中に行ったこともあって、ひどい混雑ではなく(それなりの人出ではあります)、じっくりと作品を鑑賞できました。おすすめの展覧会です。

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November 05, 2018

* 京都・醍醐寺展 真言密教の宇宙

以前から、ポスターなどで使われている如意輪観音のお姿が気になっていました。「来週末で終わるということは、確実に時間が取れる今がチャンス!」ということで、行ってまいりました。

平日ということもあって、ひどい混雑ではありませんでした。訪問者の平均年齢は高い感じです(私は若いほう)。会場に入ってすぐに、如意輪観音がいらっしゃいました。実は絵葉書を購入したのですが、絵葉書では白地にぽんと観音さまが浮いているような感じで、いかにも「絵葉書」という印象になってしまっています。ポスターや展示と同じ、黒い背景がいいなあ、などとぜいたくなことを思ってしまいました。

醍醐寺の歴史から始まるので、平安時代の像や絵などが展示されています。真言密教のお寺なので、不動明王の像や絵がいくつか見られます。どれもすごい迫力だなあ、と感心しました。当たり前のように重要文化財や国宝とされているものが多く展示されています。

五大明王像は圧巻! という感じでした。大威徳明王が乗っている水牛が、なんとなくかわいいお顔でしたけれど。国宝の薬師如来はとても大きくて、威厳が感じられました。

また、醍醐寺が宗教的にも政治的にも重要な寺院であったことを示す展示もありました。開祖が天皇家にゆかりのある人物であり、修験道だけでなく空海に近い人物から真言密教を教えられたということで、これは自然な流れだったようです。足利尊氏が懇意であった座主賢俊の四十九日に奉納したという理趣経もありました。達筆というわけではありませんが、丁寧に書かれた文字が印象に残りました。

そして、戦乱で荒廃した醍醐寺の再興に尽力した義演を支援したのが、豊臣秀吉でした。最後は、当時描かれた「いかにも安土桃山」という障壁画と、醍醐の花見で出席者が詠んだ和歌を清書した短冊などでした。江戸時代に描かれた《松桜幔幕図屏風》は、秀吉の生前に行われた醍醐の花見の華やかさを思わせるものでした。こちらの記事の最後のほうで紹介されています。

――ということで、醍醐寺の歴史は真言密教とも政治とも深くかかわってきたのだなあ、と感じさせるものでした。展示品リストには、九州国立博物館でのみ展示、というのが多くあったので、来年開催される九州での展示は、さらにパワーアップしていると思います。如意輪観音像が気になった方は、行ってみるといいのでは、と思います。

今回はせっかく東京ミッドタウンに行ったので、虎屋茶寮であんみつと抹茶グラッセのセットをいただきました。

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さらにせっかくなので、季節の栗あんみつにしました。

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上にのっているのは栗のアイスかな、と思ったのですが、なんと栗のペーストでした。優雅な時間を過ごして帰宅しました。

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November 04, 2018

* 平成30年秋季特別展「酒飯論絵巻−ようこそ中世日本の宴の席へ−」

これもTwitterで知った展覧会です。面白そうな内容なので行ってみました。茶道についてはまったく詳しくないので、なぜこういう展示を茶道の資料館で行うのか、までは考えていませんでした。

そんな状態ですが、展示は興味深く見ました。
酒飯論絵巻(しゅはんろんえまき)は、酒が好きな「造酒正糟屋朝臣長持(みきのかみかすやのあそんながもち)」、飯と茶を好む「飯室律師好飯(いいむろりっしこうはん)」、酒も飯もほどほどを良しとする「中左衛門大夫中原仲成(ちゅうざえもんのたいふなかはらのなかなり)」という3人が言葉をつくして「酒」と「飯」について「論」じ合う物語に、3人がそれぞれご馳走をふるまう絵がつけられたものです。
ということで、それぞれが好きなタイプの宴会が描かれています。酒好きの宴会は酔っぱらって大変なことになった人々が続出しています。ご飯とお茶が好きな人の宴会では山盛りのごはんが供されて、もりもりと食べています。どちらもほどほど、という場合は、あまり極端に走らずに楽しんでいます。

この絵巻を見ていて興味深かったことが2つあります。1つはもちろん、器はどういう形だったか、調理はどのように行われたかなど、当時の生活(宴会なので、日常ではないでしょうけれど)が生き生きと描かれているところにあります。先ほども少し書きましたが、酔っぱらうと今も昔もそんなに差はないんだな、という感想を抱きます。

そして、この「酒飯論絵巻」はいくつかの写本が存在するそうですが、その中の4種類を取り上げ、ポイントとなる部分を比較しています。これが、私にはとても興味深いものでした。原本に近い、または原本そのものとされる文化庁所蔵の版は、着物の柄や器に盛られた料理が詳細に書き込まれているのですが、それ以外の版では着物の柄が少し違っていたり、器に盛られた料理の描写が大雑把になっていたりするのです。

例えばですが、茶臼の細かいパーツが、時代が下るにつれて形が変化するために、原本通りに描かれなくなっています。文化庁の版では調理をする人物の足が見えている絵も、底本とした版で足が描かれていなかったからか、比較的再現性が高いものでも足が描かれていないものがあります。後世に色が塗りなおされ、もとは茶色だったお酒が別の色で描かれたり、器の色味が変わっていたりします。

このような小さな差から、どちらが古いか、どれが原本かを考察する作業は、まさにパズルという感じです。もちろん絵柄だけでなく、絵具などの科学的な鑑定も入るでしょうけれど。しっかりとした図録も販売されていて、そういう細部の比較なども面白そうだったのですが、正直なところ荷物はもう増やせないな、という状況だったのであきらめました(自宅もそうですし……)。

それと、私自身が茶道に詳しくないのもありますが、茶道の懐石料理で現在使われている銚子(徳利ではありません)の歴史的な変遷なども紹介されていました。そういう方面が分かる人だともっと面白いのかな、と思います。

実はこの展覧会にはお茶券もついていまして、お茶(抹茶)とお茶菓子をいただけました。

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茶道とは縁のない私も、ゆっくり楽しみました。周辺には茶道具のお店もあり、「表千家も裏千家もあるし、このあたりはそういう人が集うエリアなんだなー」という印象を持ちました。

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November 03, 2018

* 本能寺刀剣展 2018秋

この記事を書いている時点で、刀剣展についての情報はこちらのページに掲載されています。

この展覧会は、Twitterで「勉強になる」とTLに流れてきました。宿からも行きやすい場所にあったこrもあり、せっかくなので朝いちばんに行ってみました。もちろん参拝もして

本能寺の大賓殿宝物館での展示でした。最初に入るフロアが刀剣展で、本能寺と縁のある刀剣が展示されていました。森蘭丸の大太刀と伝わる刀もありました。「こんな刀があったのか」と印象に残ったのは、織田信長が命じて磨り上げ、南蛮風の拵えにしたという太刀でした。

由緒ある太刀を無銘にすることに信長の意図があったようです。そこで磨り上げた人物が、目立たないところ(鍔の裏だったか)に、今は無銘であるが、だれそれが磨り上げ、これこれこういう太刀である、とこっそり刻んでいます。依頼主(信長)の意図を無視する行為ですから、命がけだったようです。

「京のかたな展」で仕入れた情報によると、磨り上げて本来の銘を失った場合は、磨り上げた人物が先ほど上の段落で書いたような由緒を銘にします。後世の鑑定というか、判断されたものは朱銘にするそうです。先ほどの刀はそれができなかったもの、ということです。

このように歴史的な刀もあれば、現代の刀工が手がけた刀も展示されていました。

そして、次のフロアは「日本刀が学べる展」ということで、刀ができるまでを詳しく説明しています。玉鋼を鍛える方法など、模型か実物かは分からないのですが、見て分かる資料とともに段階を追って展示しています。また、さまざまな時代を代表する刀剣の等身大の模型も展示されていて(自由に触っていいそうです)、時代とともに変化する様子を知ることができます。

さらに、三日月宗近や五虎退などの押形とともに、刀剣鑑賞で必要となる用語の解説もありました。とても分かりやすかったです(と言いつつ写真を撮らなかったので紹介できないのですけれど)。

こういう感じなので、スケジュールに余裕があるなら、本能寺刀剣展を見てから京のかたな展に行くと、より理解が深まるのではないかと思います(個人の感想です)。

ところで、ちょうど私が行った日から、森蘭丸の大太刀の押形が押印される期間限定の御朱印が始まっていました。

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運がよかったです。

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November 02, 2018

* 特別展 京のかたな−匠のわざと雅のこころ ―

偶然翻訳祭の日程がこの特別展の会期に重なったので、「これは見に行くしかない!」と、前売り券を購入し、「わくわく」と楽しみにしていました。夜行バスを使うので、平日朝早くに京都に着くのも有利です。

宿泊予定のホテルに荷物を預け、朝食もいただいて、博物館に向かいます。時計を見ながら移動していたわけではないのですが、8時45分くらいには博物館に到着していたと思います。予想外の人出でした。私の感覚でこれに近い人出だったのは、まさに東京国立博物館での「鳥獣戯画展」です。鳥獣戯画展の方が人数は多かったとは思いますが、それにひけを取らない並び方でした。

鳥獣戯画展はどうしても巻物に人が集中してしまいましたが、「京のかたな展」では会場にまんべんなく人がいる感じなので、中に入ってからの混雑は、そんなにひどいとは感じませんでした。もしかしたら、開館前から並ぶ熱心な刀剣ファンは多いけれど、そこに追加して鳥獣戯画展のように続々と詰めかけるほどの動員はないのでしょう。とすると、トータルでは「印象派の展覧会」くらいかもしれません。

時間が足りないので、三日月宗近や圧切長谷部など、最前列で見るのをあきらめたものは数多くあります。とにかく数が多いので、単眼鏡も駆使してじっくり見ていたら、余裕で1日を会場で過ごせると思います(空腹でひっくりかえりそうですが)。

ひとつひとつの刀をじっくり鑑賞して論じられるほどの知識はないのですが、今回の展示で三日月宗近をはじめとする初期の太刀の形は優美だと思いました。実際に持ったら違う感想かもしれませんが、軽やかな感じさえします。武器らしくないなあ、と思いました。

私はヨーロッパ旅行で中世(近世もあるかも)の剣を目にする機会がありましたが、やはり日本の武器に比べると武骨というか、「斬る」より「(本体の重量も活用して)殴打する」を重視したものです。軽やかとか優美という言葉とは無縁の姿かたちで、日本の刀とは全然違います。

ヨーロッパの剣も戦闘で使用するという役割が薄れてからは美術工芸品だったとは思うのですが、造形そのものよりも、装飾(宝石で飾るとか)を重視したのかな、と思います。

そうやって優美に軽やかに作られていた太刀も、鎌倉〜室町時代となるとより威力を発揮できるような重厚な雰囲気になります。大太刀ともなると「本当に戦場でこれを振り回していたんだろうか……」という感想を抱くような大きさ(長さ)です。刃が届く範囲には近寄りたくありません。

打刀や短刀も多く展示されていました。とは言っても長さや身幅にバリエーションがあって、刀工だけでなく依頼主の好みや用途によってもさまざまなものが作られたのだろうと思います。「自分だったらどんな刀がいいかな」なんて考えるのも、面白いのではないかと思います。

時代が下るにつれ、新たに鍛えられた刀だけでなく、その時代の用途に合わせて過去の太刀を磨り上げたものも多くみられるようになります。展示の解説にもありましたが、当時の刀工が過去の作品を磨り上げることで研究し、自分の作品に活かしていたようです。

――ということで気になったのは、長義の刀を堀川国広が磨り上げて作ったという打刀です。国広はそれだけでなく、この刀の写しも作ったと解説にありました。うん、確かにこの切先の感じは、足利で見たことがあるような……。

ということで、まったく詳しくなくてもこれだけ考えが広がったのですから、詳しい人にはどれだけ魅力的な展示だったのだろう、と思います。Twitterで見ていると、京都や近県に在住の方が通いつめたくなる気持ちが分かります。詳しい人なら、見るたびに新たな発見があるでしょう。

私は図録を買い、コラボショップでグッズを買ったところで時間切れになりました。次の目的地にまっすぐ向かう予定が疲労と空腹に耐えきれずにお昼を食べたため、次の予定に遅刻してしまいました……。

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October 04, 2018

* 企画展「標本づくりの技(ワザ)−職人たちが支える科博−」

こちらも気になっていたので、昆虫展の後で入ってみました。場所は日本館1階、地下1階だとラウンジがある場所の上にあたる企画展示室です。

昆虫展で見た昆虫も、常設展で見ているあれやこれやも、すべてこういう標本資料がベースになっています。それを作成するのが、決して表には出てこない職人(とも呼べる人)たちなのです。そういう地味で大切な作業と、それを行う人たちにスポットライトを当てた展示でした。

植物の腊葉(さくよう)標本(押し葉標本)は、種類によってはお湯で煮ると、立体的なもとの姿に戻せるそうです(煮戻し)。ホットプレートや電子レンジで加熱すると書いてありますから、そういう方法もあるのでしょう。その後もまた押しつぶして乾燥させると、再び保存ができる状態になるそうです。そういうものだったとは、知りませんでしたー。

詳しい説明が書かれたパンフレットがあるのですが(無料)、その表紙に
収集された自然物や科学技術の産物などの「モノ」を研究、修造あるいは展示などの目的に合わせて「標本化する」ことによって、初めて「モノ」は「標本」としての命を獲得する。
「標本」とは、博物館などが、自然界に存在する様々なものを多種多様な目的に沿って全体の中から取りだし、観察・調査する対象の一部を構成するもの。
とあります。

当然ながら、保存状態も大切です。20世紀初頭に「伝インカ帝国のミイラ」として寄贈された子どものミイラ標本(子どものときに見た覚えがあります〜)も、単なるペルーの「子どものミイラ」だったのが、時代が下るにつれて調べられることが増え、今ではインカ帝国末期〜植民地期に人為的に作られたミイラ、ということがわかったそうです。今後はDNA分析などもできることから、さらに詳しいことが分かるのではないか、ということです。これは、保存状態が悪かったらできないことです。

そのほか、化石のレプリカを作る過程や、動物標本の種類や最先端の3Dプリンターを利用した剥製の作製技術、人骨修復なども見ることができ、決して規模は大きくありませんが、非常に興味深い展示でした。博物館を支え、未来の人々に貴重な標本を残すためにも、この作業の重要性を多くの人々が知ることは大切だと思います。

この展示は、博物館の裏側を描いた漫画『へんなものみっけ!』とコラボしています。展示室でも試し読みの小冊子を配布していました。作者の早良朋さんは、国立科学博物館で実際に標本を作っていた経歴を持つそうです。

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