活版印刷

November 23, 2018

* 天文学と印刷 新たな世界像を求めて

もともと興味のある内容なのと、チラシがとてもいい雰囲気なのとで、行ってみることにしました。実は9月に行った[世界を変えた書物]展(私の感想はこちら)と、内容というか書物がかぶるところもあります。

これまでに仕入れた知識からまとめると、活版印刷が始まったころは、印刷業者(この展覧会では印刷者という言葉を使っていました)自身も知識人(どんな内容を印刷しているか理解できる人)で、権力者にとって都合の悪い内容のものを印刷することを警戒されて、規制を受けたことも多々ありました。

出版業者が規制を受けるというのは、日本でも同じことがあったので、国や文化が異なっても共通するところがあるのだなあ、と思っています。それまでと比べたら大量に印刷できるし、情報が拡散するスピードを考えると、それも当然というか、権力を持つ側からしたら規制したくなる存在なのだろうと思います。

そんなわけで、やはりこの展覧会で紹介される本の印刷や出版を手がけた人物のなかには、自身も天文学者であったという人がいました。そういう天文学的な重要性を評価できる流れがあって、コペルニクスの著作が出版にいたったそうです。

アルブレヒト・デューラーも印刷に深くかかわっていました。彼自身学術的な知識も持っていたので、たとえば天球図を手がけたりもしています。

先ほども書きましたが、活版印刷で大量生産が可能になったため(しかも挿絵付き)、天体の観測方法など、重要な情報が、それまでと比べたらとてつもないスピードで拡散するようになったそうです。これで夜空を観測する人も増え、情報が蓄積され、それを分析してまた新たな発見がなされ……ということがあったのではないかと思います。

植物学は、挿絵のついた本が広まったことで、それまで文字による記述が頼りだった同定が、非常に容易になったそうです。インターネットで様々な情報に容易にアクセスできるようになった現代では、そこまで大きな変化だったとは想像が及びませんでした。

コペルニクスの『天球の回転について』や、ケプラーの『宇宙の調和』など、[世界を変えた書物]展でも紹介されていた書物が、この展覧会でも紹介されていました。

今回、興味深く感じたのは、最後に日本の暦法との関連が紹介されていたことです。日本では、吉宗の時代に規制が緩和され、正確な暦を作るために、ヨーロッパの天文学の書物が輸入されるようになったそうです。それまでは、中国(明や清)で翻訳されたものを入手していたとのことでした。中国で翻訳された書物や、日本人が記した暦の本などもありました。

大きな展示ではありませんが、じっくり楽しみました。

ところで、いつも印刷博物館に行くときは、文京区役所からB-ぐる(コミュニティバス)を使用しています。B-ぐるは帰りに使えるルートがないので不便だなあと思っていました。そこで今回は、初めて印刷博物館から神楽坂に歩いて行ってみました。意外と近いし、街並みを眺めながら歩いていると退屈しません(後楽園駅から印刷博物館の道は、歩きやすいですがそういう面白いものはありません)。

さらに神楽坂には、ランチを楽しめる場所がたくさんあります。今回はカジュアルなビストロでフレンチを楽しみました。神楽坂は飯田橋駅も近いので、後楽園駅に比べると、交通の便(地下鉄や鉄道)もはるかに便利です。今度からは、印刷博物館の後は神楽坂に来ればいいんだな、と思いました。

uriel_archangel at 11:57 | 講演会・展覧会 
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September 15, 2018

* [世界を変えた書物]展

会期が短かったので、今後の予定を考えると、これは今週しか行ける時間が取れないな、ということで行ってまいりました。実は初めての上野の森美術館でした。私にとっては異色の展示会でした。
本展では、金沢工業大学 が所蔵するコレクション“工学の曙文庫”から選りすぐられた稀覯書の数々を、わかりやすく展示公開します。
ということで、関連した実験器具などの展示はなく、ひたすら本を見る展示でした。

20180914a

最初の部屋は、こんなふうにたくさんの本が並べられていて、幻想的な空間になっていました。人が途切れることがなかなかなくて、慌てて撮影したのでちょっと曲がってますね……。

当然と言えば当然なのですが、展示されている本は本当に有名な学者のものが多く、理系は専門外の私でも名前を知っている人物ばかりでした。というか、「この人はこういう研究もやっていたのか」という発見もありました。

そして書物を紹介する展示では、下に鏡が置かれているので装丁も見ることができました。古いものほど凝った装丁で、現代に近づくほどあっさりとした作りになるのが興味深かったです。活版印刷は大きな変化ですが、本の流通の方法も、また時代によって変化しているのですね。

昔は、いろいろな分野に精通した人が多かったのだなあ、と思いました。例えば、ゲーテと言えば作家として知られていますが、外交官でもあるだけでなく、今回の展示でもあったように、色彩(光)に関する著作もありました。それと、ヤング率で有名なヤングも実は医師で、やはり光に関する著作がありました。

また、当然ながら出版と同時代の人物の著作だけでなく、活版印刷の初期には古代〜中世の重要な著作が出版されました。そのような人物としてウィトルウィウス、エウクレイデス(ユークリッド)、アルキメデス、イシドールスが挙げられます。活版印刷の出現以前は写本という方法しかなかったわけですから、活版印刷がどれだけ知識の普及に貢献したかを実感します。

そして当然ながら、そうやって普及の機会が増えると、どのような言語で書かれているかが重要になります。

20180914b20180914c

解説部分も撮影したのですが、見にくいかもしれません。
ステヴィンは16世紀の偉大な科学者のひとりだったが、著作をオランダ語で書いたので、その影響は地方にとどまった。
国境を越えて人々に自分の著作を知ってもらうには、当時はラテン語で書かなければなりませんでした。でも彼にそういう思いはなく、自分の周囲にいる人々に教えたいと思ったので、世俗の言葉のみで記したのかな、と思います(真相は分かりませんが)。

現代でも、英語で論文を書かないと書いたと認識されない、というような話があるのを思い出しました。

最後のショップでは、家族のおみやげにトートバッグを入手して帰宅しました。

現代ではそういう意義はあまり強調されませんが、出版は新しい知識や思想を広めるということで、かなり「とんがった」職業であり、時代によっては(日本でも)印刷・出版の業者は権力者から取り締まられたりしたそうです(今回の展示では、そういう側面には触れられていません)。そういう歴史を思いながら見ると、また別の感慨を覚える展示でした。

uriel_archangel at 11:58 | 講演会・展覧会 
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